第75章 告白〜明智光秀〜
暫くすると、久兵衛さんが傘を持って私たちを迎えに来てくれた。
帰りの遅い私たちを心配してくれたのだろう。
でも、抱きしめられたままの光秀さんを見てお取り込み中と思ったのかすぐ立ち去ろうとしていたので、私は声を掛けた。
「久兵衛さん、手を貸して下さい。光秀さんに熱が…」
そう呼び止めると、飛んで来てくれた。
そのまま光秀さんの御殿まで担いで運んでくれたのだ。
本当に久兵衛さんがいてくれて良かった。
私一人じゃどうしようも出来なかったもの。
私はすぐ安土城に戻り、信長様にこの事を報告しに行った。
……
「ー…葉月、光秀に熱があるとよく気づいたな」
そう信長様に言われ、私は焦った。
確かに。
鈍い私が光秀さんの体調の変化に気づくのはおかしい。
でも馬鹿正直に、『当てられた光秀さんの唇が以前よりも熱かったので』とは言えない。
何度もキスしているのがバレちゃうもん。
私はええっと…と言いながら言葉を探すと
「た、たまたまです。何となく体調が悪そうだったので」と言った。
我ながら、上手く誤魔化せた気がした。
信長様は不敵な笑みを浮かべ、何かに納得して何度も頷いた後に
「なら、お前が光秀の看病をするように」
…と、そんな大役を私に任せてくれた。
ーー…しっかり看病して来い
そう言われ、何か企んでいるのではないかと一瞬思ったが、有り難く受け入れた。
自分からは恥ずかしくて、志願出来なかっただろうから。
…あんな告白の後だし。
そんな訳で、私は光秀さんの御殿でご厄介になっている。
光秀さんのお世話をするという名目で。