第75章 告白〜明智光秀〜
「…光秀さん。もしかして、気づいていなかったんですか?」
「………あぁ。いや、俺を悪く思っていないのは知っていたが、誰にでも親切だろう?お前は」
「何ですか、それ」
「お前はそういう所も秀吉と同じだな。優し過ぎるが故に好意がわかりにくい」
「いえ、光秀さんが鈍感なんだと思います」
「…お前に言われたらお終いだな」
「あ、ひどいです」
そうか…なら、遠慮は無用だったようだな。
光秀さんは急にそんなことを言うと、私の手を取りゆっくりと話し始めた。
「葉月…なら、忘れろと言った俺の発言は取り消す。悪かったな」
私を見つめる光秀さんの目は穏やかだった。
そして、眉を下げて言ったのだ。
傷つけるつもりはなかった、と。
不意打ちの優しい言葉に涙が溢れてくると、光秀さんは長い指先でそれを拭った。
「お前と秀吉なら上手くいくだろうと思っていたんだ。優しい者同士、幸せになれるだろうと。…だがな」
ふう、と息を吐くと観念したように光秀さんは緩く笑った。
「俺はどうしてもお前を諦められなかった。…初めて怖いと思った。お前に何かあったらと思ったら…怖かった。こんなにお前が大切なんだとやっと気づいた」
「ー…好きだ、葉月。誰よりもお前が」
そう言って、二度目のキスをくれた。
驚きよりも先に、初めての時よりずっと熱い光秀さんの唇に違和感を感じ、私は光秀さんの頬やおでこに触れた。
「…光秀さん、熱いです。熱がありません?」
「どうだろうな。身体は怠いが」
「そうだったのですか?!言って下さいよ」
やけに今日は素直にペラペラと話すなとは思っていたけれど、まさか熱があったなんて。
肩で息をする光秀さんが気怠そうで、なんだか妖艶だった。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、平気だ」
「雨に打たれたせいですね。私のせいです。ごめんなさい」
「気にするな。最近、ろくに寝ていなかったのでな。そのせいだろう」
「もうっ!ちゃんと休息して下さい」
私は光秀さんを抱きしめると、背中を摩った。
光秀さんは私の肩越しで笑うと、少し身体を預けてきた。
…かわいい。
光秀さんが子どものように大人しくなったので、私は微笑んだ。
ー…私も大好きですよ、光秀さん。
でもそれは…また落ち着いたらお伝えしますね。