第75章 告白〜明智光秀〜
「お前は優しい。誰に対しても、どんな時も。人の良さを見つけて、それを相手に伝えられる。それも見返りなく。…なかなか出来ることじゃない。慣れない環境でお前が居場所を見つけられたのは、お前が必要とされていたからだ。安土城の中でお前を嫌う者など、きっといないだろう」
「ありがとうございます…。そんなに褒められたのは人生で初めてです」
私が照れて身体を小さくすると、いつものように光秀さんの目がギラッと光った。
「まあ、欠点を上げるとしたら…男の趣味が悪いというくらいか」
「な、なんですか。それ」
「…お前、秀吉とはあれからどうなった?」
「どうなってもいませんよ、別に」
「なぜそうなる?秀吉に好きだと言われたのだろう?」
「はい。でも、返事は要らないって…」
「はぁ…それを真に受けるとは」
「ダメなんですか?」
「駄目ではない。本当に何もしていないのか?」
「え?」
「秀吉とは何も…していないのか?」
「どういう意味ですか?だって、私好きな人としか何もしませんから…あっ」
私は余計なことを言い出した自分の口を、両手で隠した。
でも、光秀さんは動じず静かに言葉を待っていた。
「何故だ。俺との事は数には入れないのか?」
「光秀さん…もしかして、私が流されて口づけしたと思ってます?」
「あぁ。違うのか?」
「違いますよ!二人とも酔っ払ってはいましたけど、私は好きな人としか絶対あんなことしません。そもそも夜なんかに殿方の部屋に行きませんし」
「…そうか。だが、あの日俺は酔ってはいない」
「え?そうなんですか?!てっきり酔った勢いかと…」
「待て。重要なのはそこじゃない。お前、好きな人と言ったな」
「…はい。言いました」
「好き…だったのか?俺が」
えぇ?そこ?!
光秀さんが急に黙り、長い指を持て余すように顔を覆った。
その隙間から覗く頬がほんのり赤く染まって見え、光秀さんが照れているのだと気づいた。