第75章 告白〜明智光秀〜
本格的に雨が降り出し、雨宿りをするしかなくなった私たちは大きな木の下に入った。
「一難去ってまた一難…か」
「う、すみません」
雨を眺めながら光秀さんが呟き、また私が謝ると光秀さんが笑い出した。私のせいで雨に濡れ、なかなか帰れず、まさに謝りっぱなしである。
「冗談だ。久しぶりにこうして葉月とゆっくり話せているからな。天の恵みだ」
「そこまで言うと嘘っぽいです」
「…そうか?」
そう言いつつも、本音は嬉しかった。
いつもの光秀さんの軽い発言だとしても、思わず頬が緩んだ。
ふう…と光秀さんが濡れた髪の毛をかき上げると、雫が静かに落ちていき、端正な顔立ちがはっきりと現れた。
まさに美形。
私は思わず見惚れてしまった。
その視線に気づき、光秀さんはクスッと笑った。
「…なんだ、惚けて。どうかしたか?」
「光秀さんって、美しい顔をしてますよね。お化粧したら女性と間違われそうなくらい、綺麗です。肌も白くてきめ細かくて…」
そう言って、男性にこの発言は失礼だったかなと気づいた私はすみません、急にと謝った。
「いや?俺のこの顔も仕事道具の一つだ。人間というのは、見かけで騙される者が多いからな…」
「そうですか…」
私の知らない辛いことがたくさんあったのだろう。そんなことを思わせる光秀さんの話に言葉が続かなかった。
「でも、お前に容姿を褒められたのは初めてだな。貴方は本当は優しいだとか仲間思いだとか内面を褒められたことはあるが…。それに、初めて会った時もお前は俺に『笑顔が嘘くさい』と言っていただろう?あれは傷ついたな」
「え?!私、そんなこと言いました?」
「…覚えていないのか?」
「はい。すみません…」
「お前らしいな」
光秀さんは笑うと、私の濡れた髪をゆっくりと耳にかけた。
顔が近づき、ふっと真面目な顔になった光秀さんから目が離せなくなる。
「…本当は嬉しかった。お前が俺の中に良さを探して見つけてくれるたび、俺が突き放そうとしても優しくしてくれるたびに…心の中で感謝していた」
「光秀さん…」
「嘘ではない。本当だ」