第75章 告白〜明智光秀〜
光秀さんは素早く男を縄で縛ると、後から来た久兵衛さんに男を渡して私の所へ来た。
「葉月、無事か?!怪我は?」
「は、はい。大丈夫です。光秀さんが助けて下さったので。やっぱり強いんですね、光秀さんって」
両肩を掴まれ、私がコクコクと頷くと…はぁと下を向いて息を吐いた光秀さんの顔にみるみる血管が浮いてきた。
「…葉月」
「はい…」
「この、バカ娘!」
私は身を縮めてお叱りを受けた。
「す、すみません」
「あんな如何にも怪しい男に、のこのこついて行くヤツがいるか!」
「でも…三成くんのことを知ってるみたいだったので」
「嘘に決まっているだろう。よく考えろ」
「だって、三成くんに何かあったらって…」
「それでお前まで攫われたら…三成だってな…」
「はい、もうしません。ごめんなさい」
「…はあ、お前は人が良すぎる。頼むから大人しくしてくれ」
「……光秀さん、怒ってます、よね?」
「怒っていない。呆れているんだ」
私が下を向いて謝ると、とにかく無事で良かったと光秀さんは両手で私の手を包んだ。
その時、自分の手が震えていたのに気づいた。
ほっとしたら、涙腺も緩み出す。
そんな私を見て、光秀さんの声が一層優しくなった。
「もう大丈夫だ。叱って悪かった。三成を助けようとしたのだろう?よく頑張ったな」
「光秀さん…」
「間に合って良かった。怖かっただろう?」
「いえ、光秀さんがすぐ来てくれたから」
「そうか。だが、……俺は怖かった」
そう言って、力なく光秀さんは笑った。
あんな男より、光秀さんの方が数倍強く見えたけどな。
私がきょとんとしたまま光秀さんを見ると、わからないか?と光秀さんは言った。
「では、その小さな頭で考えろ」
「えっ、教えてくれないんですか?」
「お前には罰が必要だ」
「そんなぁ…」
すると、遠くから光秀様ー!葉月様ー!と呼ぶ声がした。