第75章 告白〜明智光秀〜
「ありがとうございます…嬉しいです。私、秀吉さんに好かれているなんて夢にも思わなかったから」
「そう、か…」
「だって、秀吉さんって…」
「ん?」
「信長様しか愛してないって思ってたから」
ゲホゲホゲホゲホッ
また咽せた秀吉さんの背中を摩ると、秀吉さんが今度は耳まで赤くしていた。
「あ、図星でした?」
「んなわけあるか!勿論、信長様に敬意はある。が、それだけだ」
「そうなんですか?私、別にそういうのに抵抗ありませんよ?人を好きになるのに性別とか関係ありません」
「そうか。でも悪いが、俺は根っからの女好きだ」
「…………そうなんですね」
「あ、いや、違うぞ。そういう意味じゃ…」
「残念です、秀吉さん」
私が先に歩き出すと、秀吉さんの声が追いかけてきた。
「誤解だ、葉月。俺の話を聞いてくれっ」
私は笑いを堪えながら、聞こえないふりをして歩いた。
秀吉さんを揶揄うのは前から好きで、いつもの私たちのやりとりだ。
…でも、一理あると思うけどな。
秀吉さんは信長様への想いはもう、愛そのものよね。
与えるだけで満足なのよ。
私が光秀さんにそうしたかったのと同じように。
きっと、ずっと好きなのよ。
どんなことがあっても、嫌いになんてなれない。
だから、私たちは似ている。
秀吉さんの私への好きも同類を見つけた仲間意識が強い気がするのよね。
そうだとしても、秀吉さんからの『好き』は嬉しかった。
自分の存在を認められた気がして…嬉しかった。
私は振り向くと、「ねぇ、秀吉さん。お城に着いたら美味しいお茶、入れてくれます?」そう秀吉さんに問いかけた。
「あ、あぁ!もちろん」
「その時に秀吉さんが世の女性をどんなに好きか聞いてあげますから」
「だーかーらー、違うって言ってるだろっ」
私はクスクス笑い、秀吉さんの反応を楽しんだ。
その日、秀吉さんの入れてくれたお茶は美味しかった。
秀吉さんみたいに優しい。
私の心も暖かくなる、そんな味がした。