第75章 告白〜明智光秀〜
「まあ、口が堅いあんたが俺に話してしまうくらい驚いた…ってことかな?」
家康はそこまでお見通しとは。
私は口を開けたまま何も言えなかった。
「俺はいいと思うよ、秀吉さん」
「……そうよね。秀吉さんいい人だもんね」
「あぁ。あんたが気づかなかったのは、鈍いのもあるけど他に好きな人がいたからでしょ?」
…あんたはわかりやすいから。
そう呟いて、家康は仕方なさそうに笑った。
そう。
私には好きな人がいる。
でも、私の好きな人は…。
「ー…随分と面白い話だな」
ビクッと身体が揺れた。
城にいることの方が少ないのに、こんな時に現れるなんて…。
「光秀さん…」
私が小さく振り向くと、部屋の入り口で腕を組みながら持たれかかって笑う光秀さんがいた。
「襖が空いたままだぞ、葉月。秘密の話なら、もっと小さな声で話せ」
「立ち聞きですか?光秀さん」
棘のある家康の言葉に苦笑しながらも、たまたま聞こえてきたのでなと光秀さんは言った。
私が下を向いていたまま黙っていると、「…葉月」と名前を呼ばれた。
「家康との話が終わったら、俺の部屋に来い」
そう言うと、邪魔したなと手を上げて光秀さんは去って行った。
光秀さんの声や言葉に動揺して、胸がドキドキしてしまう。
私が両手を握ったまま深く深呼吸していると、家康が複雑そうな顔で此方を見た。
「そんなに緊張すること?そんなに緊張されると、こっちまで緊張するんだけど」
「だって…」
「あんたが決めることだけど、光秀さんは危険だから気をつけて。それだけは言っておく」
「…家康」
「俺は、あの人が敵か味方かもわからない。そんな人について行くのは、大変だと思うよ」
まあ、さすがに葉月には何もしないとは思うけどね。
そう家康に言われて、私は頭が真っ白になった。
ー…そんなことない。
光秀さんは、私に一度キスをしたことがある。
そして、そのキスは可愛いものじゃなく情熱的なものだった。