第75章 告白〜明智光秀〜
「……で?」
家康の冷たい声が部屋に響いた。
秀吉さんと別れた後、あまりにも驚いた私はこの状況を整理したくて、家康の部屋に飛び込んだのだった。
私がことの出来事を家康に説明したら、これである。
「もうっ聞いてなかったの?!秀吉さんが…」
「聞いてたよ。何、急に。秀吉さんが葉月を好きなのなんて、前から知ってるよ」
えぇ?!
「いつから?どうして気づいたの?」
「あのさ…逆に聞きたいんだけど、何で気づかなかったの?」
ぐっと言葉に詰まった。
そんな気づかない方が馬鹿だみたいに言わなくたって…。
「だって、秀吉さんは誰にでも優しいから」
「それにしたって距離が近いし、あれだけ尽くされたら気づくでしょ?普通。毎日のように城下まで迎えに来て、二人で帰って来てさ」
「あれは…最近、人攫いとか物騒だからって」
「でも、どんなに忙しくても俺や三成には頼まないで毎回秀吉さんが来てたでしょ?」
「うん。いつも秀吉さんが来てくれた」
「わかりやすいと思うけどな、秀吉さんは。いつだって身体が葉月の方を向いていたし。あんたを見る目が明らかにそうだった」
家康に観察眼があるのか、私が鈍すぎるのか…。
私が黙ると、家康が小さく息を吐いた。
「それで、なんて返事したの?」
「返事は…要らないって」
「ふうん。さすが、大人な対応だね」
秀吉さんは照れくさそうに今日は自分の城に帰るからと言って、私を見送ってくれた。
私はありがとうしか言えなかった。
…しかも。
もしかしたら罰ゲームか何かじゃないかとか。
ウソ告…偽りの告白ではないかと疑ってしまったのだ。
本当にごめんなさい。
だって、一瞬信長様や政宗の笑った顔が浮かんじゃったんだもん。
それぐらい、私には信じられないくらいの出来事だったのだ。
私は心の中で疑った二人にも謝罪した。
事実を確かめたくて、家康に話を聞いてもらいたかったのもあった。
家康なら冷静に聞いて答えてくれるだろうから。
信頼しているし、余計なことは言わない。
彼のそんな所も私は気に入っている。