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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第74章 ひと夏の恋でもいいから〜武田信玄〜




「さあ、次は君の番だよ」

初めて見る、優しくない信玄様だった。
私を追い詰め、本心を聞き出そうとしている。

「あ…。わたし、は…」

ひと夏の恋でもいい、確かにそう思った。
信玄様と触れ合えるなら
今、この瞬間だけでもって…

近くなる唇が余計にそんな衝動を掻き立てた。
…でも

「いやです」

「嫌?」

「…欲だけなんていやなんです。だって、私はずっと…」

「ずっと…何?」

低い声で次の言葉を促されるように言われ「…なんだか今日の信玄様、意地悪ですね」と訴えるように信玄様を見た。

すると、信玄様は私に触れていた手を離すと、すっと目を逸らした。

「だから言っただろう?君は俺を買い被っていると。君が見ている俺は虚像かもしれないよ」

そんな風に距離のある言い方をされ、私は引き留めたくなり思わず自分から信玄様の腕の辺りを掴んだ。

「そんなこと…そんなことないです。私はそのままのあなたが好きなんです。ずっと前から…だから…」


言いながらはっとした。
信玄様が此方を見て、いつもの優しい笑顔に戻っていたから。

もしかして、試されていた?
私は信玄様の目を両手で隠してひどいと言うと、信玄様はごめんと言って笑った。

「可愛いから、つい意地悪したくなってしまったよ」

「ずるいです。可愛いで誤魔化すのは」

「そうかい?でも、嘘は言っていないよ。それに…」

やっと言ってくれたね。
君のその言葉を聞きたかったんだ。

私の両手を抑えると、耳元にまた顔を近づけてそう言った。
耳元がくすぐったくなるくらいに至近距離で言われ、そこだけ敏感になる。

「信玄様には敵わないです」

敵うとは思っていないけれど、私は降参した。
そう言う私に、わかってないなぁと信玄様が言った。






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