第74章 ひと夏の恋でもいいから〜武田信玄〜
優しすぎる人って罪だな
そう思うの。
あなたの行動は思わせぶりだって、批判めいた気持ちになる。
私のこと、別に好きじゃないくせにって言いたくなる。
でも、こう思うようにした。
恋人でもないのに優しくしてくれるなんて…ありがたいよねって。
だから、あなたが私にする甘い仕草一つ一つを思い出しても、あまり悲しくはならなくなった。
きっと他の子にもそうやって夢を見せているんでしょう?
罪深いあなたの虜になってしまったのだから仕方ない。
「俺はね、君にはかなり心を解放しているよ」
…だなんて、私だけみたいに言ってきたとしても
「夏は好きですか?」
の私の問いに
「…好きだよ」と、
此方を見ながら意味深に言ってきても
夢心地でいさせてくれているだけだって
期待はしてはいけない、と諦めた時…ふっと笑えた。
そんな自分がなんだか寂しかった。
本当は、期待ばかりして落胆するのに疲れただけ。
逃げ道を見つけたかったんだ。
好きだと伝えて、振られるのが怖いだけ。
この関係が崩れてしまうのを恐れて…
勇気が出ないのを相手のせいにしているだけだ。
…本当は好きになって欲しくて堪らないくせに。