第72章 ヤキモチ〜伊達政宗〜

「政宗って…あんな感じの子が好きなの？」

「……あんな感じ？」

「綺麗な女の子だったよね、政宗と城下で話していた子」

「……綺麗な女？俺と話してた？？？」

政宗が意味がわからないという風に聞き返す。

…覚えてないの？
それとも、把握出来ないくらい沢山の女性といつも話してるの？
政宗ならどっちの理由もあり得る。

私はちょっとイラッとしてしまい、つい口調が刺々しくなるのを感じた。


「黄色い着物を着た子だよ。政宗様って政宗にくっついてた…」

「あぁ！……何、お前見てたの？」

「たまたま目に入っただけで……」

私が話そうとすると、政宗はニヤニヤしながら私を覗き込む。
その眼が爛々とし、私を見てきた。

まるで新しい玩具を見つけたような、悪い顔。
私は身構えた。

…悪い予感しかしない。

「…な、何よ」

「なるほどねぇ。ふーん。お前、見てたんだ」

「違うもん。別にずっと見てたわけじゃ…」

「で、それでそんなに怒ってんの？」

かぁぁ！
熱が一気に頬に集まり、私は慌てた。

「ち、違う！」

「違わねー」

「違うったら」

「そうか？ご丁寧に耳まで赤くしてんのに？」

余裕そうな態度。
そんな意地悪、言わなくても良いのに。

政宗が優勢なこの闘いは、私が何を言っても勝ち目はない。


…だって、本当のことだし。
私はヤキモチを妬いていたんだ。

どうしようもないくらいに。



どうしようもないくらい、政宗が好きなんだ。