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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第70章 かざぐるま〜明智光秀〜



掴まれた私の手が、そっと光秀さんの唇に触れた。
驚く私の手を掴んだまま微笑み、光秀さんは私から一切目を逸らさずに言った。

「…俺も同じ気持ちだ、と言ったらどうする?」

試すような言い方。
ずるい。

そんな風に言われたら…


「光秀さんって…本当に…」

「ん?なんだ」

「悪い人ですね」

「おや?知らなかったのか?」

悪い笑顔。
でも、その笑顔が…

何よりも
誰よりも…

「好き、です。光秀さん」


意地悪でも

悪人でも

例え、結ばれない運命の人でも…


「…葉月、俺は此処だ。俺の目を見て言え」

光秀さんの反応が怖くて目を瞑っていた私を、光秀さんが許すはずがなかった。

俯く私を引き寄せると、しっかりと腰を抱いた。
私は真っ赤になって、光秀さんを見上げる。
満足そうに微笑む顔が目に入った。
悔しくなりながらも、そんな光秀さんが好きなのだから仕方ない。

「…人がたくさん見てます。やめて下さい…」

「なら、人がいない場所に行くか?」

耳元でそう甘く呟き、光秀さんは私を誘った。
私の反応を愉しんでいるのだろう。

…光秀さんは、そういう人なのだ。



「駄目…です。もう少し、夏祭りを満喫したいですから…」

「なら仕方ない。せっかくだから、愉しむか」

肩をすくめ、光秀さんは私を解放してくれた。
私がホッとしていると、光秀さんが掴んでいた手をそのまま絡ませてきた。


「なら、手を繋がないと逸れてしまうな。致し方ない。…そうだろう?葉月」

光秀さんが悪戯っぽい笑みを浮かべ、私に繋がれた手を見せつけるように言った。

「もう片方の手で、しっかり風車を持っていろ。お前のことは俺に任せておけば良い」

「はい…」

光秀さんって…なんで私が手を繋ぎたがってるとわかったのだろう。
あの時から、気づいていたのだろうか。

その涼しい横顔を眺めても、何もわからなかった。
光秀さんが私の目線に気づき、そのまま身体を近づけフーッと光秀さんが息を吐き、私の風車を吹いた。


風車が回る、回る、回る…。


私はやっぱり、この日を一生忘れないだろう。
風車を持ちながら、そう思った。


あなたへの想いがまた、大きく膨らむのを感じながら…。




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