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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第70章 かざぐるま〜明智光秀〜



首を傾げ、暫く風車で遊ぶ私を眺めていた光秀さんは「…葉月」と優しく声を掛けてきた。

「…俺への用は思い出したか?」

ドキッ!
悪さをした子どものように私はドギマギして、気まずそうに光秀さんを見上げた。

「まだ…です」

「どんな内容かも思い出せないのか?」

「はい…」

「困った娘だな」

光秀さんはそう言って、私の頭を優しく撫でた。
その時に目が合い、思わず好きだと言いそうになった。

…でも、言えない。
言ってはいけない。
私とあなたは住む世界が違う。
生きていく場所が違う。

好きという気持ちを教えてくれただけで、ありがたいのだから。


「光秀さん、ありがとうございます」

「なんだ、改まって」

「私、光秀さんには感謝しかないですから」

「…なぜ?」

「いつも優しくしてくれて…」

「お前に優しくした覚えはないがな」

「話しかけたら応えてくれて…」

「…応えるだろう、誰であっても」



「何よりも……私の気持ちに気づいていても、気づかないふりをしてくれてます」

光秀さんの目が一瞬、驚いたように見開いた。

やっぱり。
気づいていたんだ。

だから、あなたは優しいって言ってるんです。
交わることのない私に、接してくれるから。

傷つけないように気づかないふりをする、そんなあなたが…


やっぱり好きです。




「…葉月」

「今日の日を忘れません、私」




フーッと風車に息を吹きかけ、くるくると回しながら私は歩き出した。
赤い風車が、息を吹きかける度にカタカタと音を立ててゆっくりと回った。


「光秀さん、そろそろ…」

帰りましょうと言おうとして振り向くと、目の前に光秀さんが立っていた。

「…どうかしました?」

「好きなのか?俺が」

「…やめて下さい。気づいているんでしょ?なら…もう良いじゃないですか」

「お前の口から聞きたい」

「……そんな…い、言えないです」

「なぜ?」

「だって…」

好きだって言ったら、口に出したら…もっと好きになってしまうもの。
好きな気持ちが溢れちゃうもん。

「恥ずかしい、です…」

消え入るような声でそう呟いた時、光秀さんは私の手を掴んだ。






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