第70章 かざぐるま〜明智光秀〜
二人で逸れないように歩きながら、神社の中に入っていく。
魅力的な出店が次々と現れた。
いつもなら食べ物のお店にはしゃぐ私が、何も感じない。
やっぱり、好きな人が側にいると女の子は少食になるって説は本当なのね。
そんなことを考えていると、風車が大量に並ぶ出店が目に入った。
次の瞬間、ヒューっと風が私の身体を通り、飾ってある風車が一斉に回り出した。
色とりどりの風車に目を奪われ、瞬きするのも忘れて見入ってしまう。
「…綺麗だな」
「はい…」
二人で同じものを見て、同じように感じられるのって嬉しい。
時代も価値観も違う、私たち。
でも、同じものを美しいと思える。
今、この瞬間、光秀さんの瞳に映っているものが、私の瞳にも映っている。
それだけで…こんなにも…幸せを感じる。
私、今日で死んじゃうのかな?
幸せ過ぎて、壊れてしまいそう。
風車を見ながら目を潤まさせている私に気づき、光秀さんは屈んで私に笑いかけた。
「…買ってやろうか?何色が欲しい?」
「え!ほ、本当に?良いのですか?」
「褒美をやると言っただろう」
「はい!ぜひぜひ!あの、赤いのを…」
…そんなに欲しかったのかと笑いながら呟いて、光秀さんは買ってくれた。
光秀さんが赤色の風車を持つと、また緩く風が吹いて風車が回る。
そのまま、私に風車を差し出した。
「ほら」
「あ、ありがとう…ございます…」
やばい、泣きそう。
このまま消えたい。
この幸せな気持ちのまま、この風車と一緒に飛んでいきたい。
「大事に。大事に…します。一生」
「大袈裟だな、お前は」
呆れたように言う光秀さんの口調とは裏腹に、目は優しげに細まって私を捉えていた。
いつまでもこうやって一緒にいられたら良いのに。
…帰りたくなくなってしまう