第66章 続・さようならと言えなくて〜明智光秀〜
「何が怖いのか話してみろ。話くらいなら聞いてやる」
一番私に興味無さそうな人が、そんなことを言ってくれるなんて。
その言葉だけで、話す前から心が軽くなった。
…優しいな。
ホッとした途端、気づいたら泣いていた。
しゃっくりを上げて子どものように泣く私を、光秀さんは誰にも見えないように隠してくれた。
そして、まだ泣き止まない私を見ると、後ろ向きになり静かに言った。
「誰も見ていない。泣きたいだけ泣けばいい」
こういう時は、優しい言葉をかけられる方が余計に泣けてくる。
光秀さんは、ずっと限界だった私に気づいてくれたのだろう。
泣けば泣くほど、だんだんと頭がクリアになっていく感じがした。
涙を流すのはストレス発散になるという説は正しい…と私は身をもって体験した。
泣きながら、光秀さんの静かな背中を見た。
後ろを向かれているだけなのに、励まされている気がした。
大丈夫だ…と。
その瞬間、なぜか無性に光秀さんの背中に触れたくなった。
ー…あの気持ちは、もう恋だったのだろうか?
あれから、もう半年が経つ。
私は現代に戻れたのに…あの時以上に孤独な気がした。
此処はこんなにも平和で居心地が良いのに。
寂しい
寂しくて堪らない
もう、そんなことを思っても仕方ないのに。
「光秀さん…」
逢いたい、逢いたいよ…
好きじゃなくていい。
もう、好きじゃなくていいから。
もう恋仲になって欲しいなんて言わないから
抱いてくれなくても良いから…
「もう一度、側にいたい…」