第5章 素直になれなくて〜伊達政宗〜
政宗はなんでこんなにも私に構ってくれるのだろう。
物珍しいからだろうか。
なびかないから…?
私が手に入ったら、振り向いたら…きっと飽きてしまうのではと思う気持ちは常にある。
だから、いつもこう言っている。
「ありがとう。気持ちだけ貰っておくね」
冷静に冷静に。
信長様が拾ってきた辺鄙な私に興味があるだけ。
でも、あんなに好意を口に出されたり、態度に出されたら嬉しくなってしまうのも仕方ないよね。
政宗ほどの男前に言われて、断る人なんていないだろう。
だから、揺れてしまうんだ。
好きだからじゃない。
好きになっちゃダメだ。
好きになったら…苦しいだけ。
「俺のもんになれば?」
なりたい。なりたいな。
是非、お願いしたいです。
何がそんなに良くて言ってくれているかわからないけど、とりあえず、お気持ちだけは本当に嬉しい。
「…ありがとう、政宗」
「お前、話聞いてるのか?」
「聞いてるよ。だからお礼したの」
そう言って笑いかけても、政宗は不服そうにはしない。
おもしれぇ女、と笑うだけ。
どうしたら良いのかわからなくなる一方だった。
怒ったり、諦めたりしない。
いつも政宗は楽しそうだ。
楽しいことを見つけるのが上手で、人生を謳歌している。
今というこの時をとても一生懸命に生きている。
そんな彼に、いつ現代に帰るかわからない私は不釣り合いな気がした。
段々と政宗を袖にするのがしんどくなってきた。
そんな時だった。