第63章 二度目のキス〜伊達政宗〜
し、したい。
政宗となら、もうちょっと口づけしてみたい。
…なんとチョロいのか、私は。
そんなことを言うのは、はしたないのかな?
ドキドキして言葉が見つからず…唇が震えた。
「あ、あの…」
「ん?なんだ?」
"自分の口で言え"
愉し気に政宗の目が笑っている。
…察しているくせに、政宗は意地悪だ。
私に言わせようとしているんだ。
でも、言えない。
恥ずかしさが勝って、欲望が押し込まれた。
「だ…ダメだよ。そういうの、好きな人としなくちゃ」
「なんで?お前のこと好きだけど?」
心がチクッとした。
政宗の言ってる好きと私の言ってる好きは違う。
政宗の好きは、私の欲しい『好き』じゃない。
「そんな物欲しそうな顔、すんなよ」
「してない…」
「嘘つけよ。俺を騙せるとでも思ってんの?」
思ってないけど…。
気まずくて私が黙って見つめると、仕方なさそうに政宗が言った。
「じゃあさ。お前が次の相手見つかるまで、俺が練習相手になってやるよ」
「練習…相手?口づけの?」
「そ。そんな難しく考えんなよ」
政宗の思考はいつも私よりずっと柔軟だ。
リハビリってことなのかな?
そういうこと?
「……うん、わかった」
「わかった?」
「う、うん。あの、そんな…顔近づけて話さないで。恥ずかしいから」
「なんで?恥ずかしがってる顔、すっげー可愛いぜ?」
かぁ…っと顔に熱が集まる。
コノヤロウ。
もう、どんだけだ。
「…葉月。もう、してい?」
「!?」
「御預けがなげーよ」
「そんな、口づけくらいで…」
「お前、わかってないね。口づけだけだってイけるし、堕ちることも出来るんだぜ?」
「…えっ…」
「あーぁ、罠に掛かっちまったな。ご愁傷様。もう俺から逃げられないぜ?」
唇は一番感度が高くて、思考すら止めてしまう。
そう、それを私は知らなかった…。
政宗の口づけに蕩けさせられ、きっと政宗の思うがままに。
「ー…口づけの良さ、俺がたっぷり教えてやるよ。もう誰とも出来なくなるくらい、とびっきりのやつをな」
可愛い葉月、さあ俺と…甘美な世界を味わおう。
もう二度と、苦手なんて思えないかも…な?