第63章 二度目のキス〜伊達政宗〜
キスが…得意じゃない。
唇同士が触れ合うのもなんか嫌だし、唇を舐められたり舌を入れられるなんて…想像しただけで鳥肌が立つ。
ドラマや映画でぶっちゅーとしているのは観るのは平気なのに、それが自分の身に起こると思うと無理だ…としか思えなくて。
好奇心であまり好きじゃない人とファーストキスをしたからかもしれない。
自己嫌悪が抜けなくて…
きっと余計に口づけに嫌悪感がするのだろう。
だから…
「口づけが嫌い?」
「…そうなの」
「お前、それってちゃんと好きなヤツとしたことないからじゃねーの?」
「だと思う」
「じゃあさ、上書きしてやろうか?…俺が」
政宗の形の良い唇が私を誘った。
少し白い歯が覗いた口元に、思わず目が奪われた。
う、政宗って…すごいな。
側にいるだけで妊娠しそうなくらい、色気が半端ない。
「いや。もう、大丈夫」
「……は?」
「想像だけでなんか克服した気がする。…ご馳走さまでした」
「ご馳走さまでしたってお前…。ほんっとに、変な奴だな」
カラカラと政宗が笑い、私は舌を出して笑った。
いやいや、こんなイケメン顔を側で眺められるだけで有り難いもの。
想像させて貰っただけで、充分です。
すると、政宗は私の顔をじっと見て指を差した。
「なあ、お前…顔にまつ毛ついてるぜ?」
「え?どこ?」
私が目の周りを擦ると、政宗は私の顔を覗き込み「…ちょっとじっとしてろ」と顔を近づけ、人差し指で優しく頬を触った。
政宗の突然のどアップに肩が上がった。
「ココ。ほら、取れた」
政宗は私に指先についたまつ毛を見せた。
「あ、ありがと…」
私が照れて少し顎を引くと、政宗の唇が私の唇に一瞬触れた。
何が起きたかわからず、私はそのまま硬直した。
「…隙あり」
そう言うと、政宗は口の端を上げた。
してやったり。
正にそんな顔をして、政宗は私を見た。
「な、何を…?!」
「どうだ?嫌な気分?」
「一瞬過ぎてわからなかった」
「そうか。なら…」
政宗が私の顎を掴み、「もっとする?」と吐息混じりに甘く囁いた。
「えっ……!」
言葉を失う展開に、驚いたまま政宗を凝視した。