第62章 さようならと言えなくて〜明智光秀〜
「あっ!大河ドラマ録画しなくちゃ」
「あぁ…明智光秀だっけ?お姉ちゃん、歴史興味なかったのに、最近どうしたの?」
「だって、優しいし凄いかっこいいんだよ?」
「…なにそれ。知り合いみたい」
呆れたように笑う妹の言葉が聞こえ、我に返る。
知り合い…だったんだよ。
意地悪く上がる口元とは裏腹に、優しい心を持っている人だったんだよ?
もしかしたら、息苦しさを感じていたのは私の方だったのかもしれない。
光秀さんを好きで、好き過ぎて苦しかった。
光秀さんの唯一にはなれてないことを
これからもなれないだろうと感じていたから…
わかっていたから…
光秀さんに愛されないのは当然だよね。
私の愛は身勝手だったもの。
きっと、今頃…
光秀さんも安堵しているのだろう
そう思って、自分の携帯を握りしめる。
一番に連絡を取りたい相手とは、絶対に取れない。
声を聞くことも
会うことも…
もう二度と出来ないんだ。