第62章 さようならと言えなくて〜明智光秀〜
わかったと言って帰ろうとする佐助くんの後ろ姿を慌てて止めた。
「さ、佐助くん…。やっぱり、私帰るかもしれない」
「え?」
「帰る…方が良いのかもしれないね。歴史をこれ以上、弄り回してはいけないよね。他人にこれ以上、関わってはいけないよね」
佐助くんに伝えているようで、自分に言い聞かせるような言葉だった。
本当は、もう限界だった。
やきもちを…妬いてくれたのかもしれないと喜んで、
もしかしたら大事に想われているかもしれないとひとりで大騒ぎして、
必死で走って守ってくれたのが嬉しくて…
いつだって、ひとりではしゃいでいた。
いつだったか…現代から来たという話を打ち明けた時に光秀さんに言われた。
「お前は以前居た場所に…500年後に帰らないのか?」
「はい、此処にいたいので。光秀さんの側にいられるだけで幸せなんです」
「…そうか」
そう言った光秀さんの顔は、お世辞にも嬉しそうには見えなかった。
…私は未だにその顔が忘れられない。
もしかして、迷惑だった…?
私…重い?
……光秀さんの負担になっているの?