第62章 さようならと言えなくて〜明智光秀〜
人のことなんて、変えることは出来ない。
相手に変わることを求めずに自分の考えを変えるしかない。
相手をありのまま受け止めるしかない。
…そう思ってきた。
だから、光秀さんの考えや想いを変えようとは思ったことはない。
光秀さんは、私から好きになって…
好きで好きで堪らなくて
だからこそ、相手をしてくれているのだろう。
わかってる。
それでもいいの。
好き過ぎて「くーっ」てジタバタしたくなる。
それくらい、大好きなんだもん。
そうは思っていても時々無性に聞きたくなった。
光秀さんは私のこと…多少なりとも好きな気持ちはあるのだろうか?
ふと、私だけ一生懸命いつも追いかけてるなって…我に返ってしまうの。
それでも良いはずなのに、どうしてこんなにひとりぼっちな感じがするのだろう。
貴方が好きだから
そう…側にいられてそれだけで、嬉しいはずなのに。
この人は、私がいてもいなくても変わらないと思うから。
きっと、そうだと思うから。
光秀さんの綺麗な顔を眺めていると、今でもときめいて幸せになるのに…
その分、苦しくなる。
苦しくなるんですよ、光秀さん…
夜、これが現代に帰るなら最後のチャンスになるかもしれないと、佐助くんが安土城に忍び込んで会いに来てくれた。
何度目かの確認…。
私はいつだって答えは変わらなかった。
「葉月さん、近々ワールホールがまた開く。君の決意は変わらないままかい?…本当にもう帰れなくなるかもしれないけど」
「うん、私は現代には帰らない」
…でも、
もし私が帰ったら
あの人は、ほっとするんじゃないだろうか。
これで、私と関わらなくて済むって
始めの何日かだけ寂しがってくれたとしても…
やっと身動き取りやすくなるって
解放された、と。
内心喜ぶのではないだろうか。
光秀さんはなんだかんだ優しいから、私の想いにずっと付き合ってくれただけで…
本当は…
ずっと燻っていた想いが、私の心を支配した。
もう諦めようと思えた瞬間だった。