第61章 続・ある春の日に〜織田信長〜
爽やかな風が吹く春の日、私は初めて城下に来た。
賑わう町並み、行き交う人々…。
この時代の人たちは活気があるな。
そんなことを思いながら、私は秀吉さんと歩いていた。
光秀さんの言う通り、秀吉さんはかなりの世話好きのようだ。
私の体調も気にかけてくれるし、まめに様子を見に来てくれるし、城下に行く時も着いて来てくれて有り難いのだけど…
「し、視線が痛い…」
女子たちの刺すような視線を感じる。
一人でも注目を浴びる秀吉さんの横に並んで歩いているなんて、余計に目立つに決まっている。
『誰?この子?』
目でそう言われているみたいに感じる。
実際、口に出してくる人もいた。
その度に「俺の妹みたいなものだ」と説明する秀吉さん…
それが更に火に油を注いでいる気がする。
"妹みたいな女の子"
そういう中途半端な女の子の存在を彼女たちは嫌う。
だって、実際は妹じゃないし…
恋愛に発展する可能性もあるからだ
こんな風に構われているのが、癪に障るのだろう
…まあ、わかる気もするけど。
あぁ、城の中でも外でも
結局こんな目線でしか見られないのね…
私は小さく溜息をついた。
「どうした?葉月」
「ううん、城下って賑やかだね」
「そうだろう?」
「秀吉様〜!お久しぶりですね」
「おぉ、久しぶりだな。元気だったか?」
次々と声を掛けられる秀吉さんは笑顔を振りまいていた。
私が横にいたら話辛いかな?
「…秀吉さん、私あのお店見てくるね」
「ん。わかった。気をつけて行けよ」
私は秀吉さんと話し始めた商人さん達に一礼して、その場を去った。