第60章 ある春の日に〜安土城から〜
アウェー感…
私が安土城に来て思ったこと。
たくさんの人の疑いの眼差しと、冷たい空気。
歓迎されていないのをひしひしと感じた。
でも、笑顔で振る舞った。
ぺこぺこと頭を下げていたかもしれないけれど、そうすることしか出来なくて。
例え、心の中で毒突かれていても…
でも、好かれていないと感じながら過ごす城での生活は辛かった。
夜に自室に帰ると何もする気が起きず、ぼんやりと座っていた。
そして、私を見てきた冷ややかな視線たちを思い出し一人で泣いていた。
「葉月様、おはようございます」
三成くんが優しい笑顔で微笑んでくれるのが、何よりの心の慰めになった。
「何かわからないことがあったら、何でもおっしゃって下さいね」
きっと本心だと思うのに、本当は面倒なのではないか?
秀吉さんに頼まれてそう言っているのではないか…。
私はそんな風に思ってしまい、こんな優しい人の発言まで疑う自分に落ち込んだ。
きっと、長い時間をかければ皆と分かり合えたり、受け入れて貰えるとは思うけれど…。
慣れるまでが難しい。
「慣れたら戦国ライフも楽しい」と佐助くんは言っていたけれど…。そうかな?
私もそんな風に思える日が来るのかな?
来たとしでも、すっごく時間がかかる気しかしない。
早く自分の居場所を見つけられたら良いな。
居ても居なくてもいい、そんな立ち位置は辛いのだ。
誰にも求められていないってキツい。
「ー…ああ、家に帰りたい」
私の場所は此処じゃない。
わかっている。
でも、信長様の命令は絶対だし。
渋々ながらも私を置くことを許可した武将たち。
ウェルカム状態じゃないのは、秀吉さんの様子からもわかるから…。
秀吉さんを支持している女子たちからも、なんだか威圧を感じるし。
政宗は「政宗って呼べ」そう言って、自由気ままだし。
家康さんは口聞いてくれないし。
三成くんは出会った時からずっと笑顔。
そりゃ三成くんが心の支えになるよね。
…この時代の何もかもがわからない。
わからないって…こんなに怖いんだ。
わからないことが多すぎて、何から聞けばいいかわからない。
迷惑かな?
忙しいかな?
そう思うと、三成くんにすら何も聞けなかった。