第59章 赤い跡をつけて〜明智光秀〜
「……光秀さんが広めたって…なんで?」
「葉月が俺の想い人だからだ。お前の耳に入れたくて、噂を流した。俺にまとわりつく様々な噂があるのは承知の上でな」
「わざわざ、私の為に…?」
「あぁ」
「.…私を想って?」
「あぁ、そうだ」
本当?
本当なの?
私、本当に…
光秀さんに選んでもらえたの…?
「う、嬉しい…。死んじゃう…どうしよう」
「まだ死なれたら困るな」
「だ、だって…。わ、私…」
「また話せなくなってるぞ、葉月。困った小娘だな」
光秀さんがそんな私の両手を包み込み、絡め取る。
私の頬に口づけてから、光秀さんが私の鼻にそのすっとした鼻をくっつけて笑う。
「話せないなら、唇を塞ぐしかないな。それとも…また赤い跡をつけられたいか?」
「…両方が良いです」
「承知した」
次は消えないように、しっかりと跡を残して下さいね。
私の心にも残るくらいに…。