第58章 こんな夜には…〜伊達政宗〜
政宗は、食べた。
一緒に作った食事よりも先に、私を。
1回目の交わりが終わった後、やっと食事になった。
政宗はきっと三大欲求に忠実なんだ。
次は食欲…。
「ほら、食えよ。この煮物もお浸しも美味いから」
「うん、ありがとう…」
少し緊張も溶けて、私はやっと食事にありつけた。
グルメな人って…凄いんだな。
政宗って想像以上に…。
「何?俺の顔になんか付いてる?」
私の視線に気づき、政宗が私に甘く微笑んだ。
う、色っぽ過ぎる。
「ううん。な、何にも」
「わりぃけど…俺、まだ抱き足りないから」
「…っ!」
政宗の言葉にご飯が喉に詰まりそうになる。
私の反応を愉しそうに見ると「だから、しっかり腹ごしらえしとけよ」と笑って言った。
「ま、また…?」
「あぁ。一晩、側にいてやるって言ったろ?」
それって…やっぱりそういう意味なんだ。
なんとなくそうかな?とは思っていたけど。
どうしよ。
なんだか胸がいっぱいになって来ちゃったな。
「政宗、私…さっきやってわかったと思うけど、ま、まぐろっていうか…面白みに欠けると言いますか…あれ以上は何も」
私がしどろもどろに言うと、政宗がブッと吹き出して笑った。
「別にお前に何も求めてねーよ。俺が味わい尽くせてないだけ。…お前、可愛くてすげぇ快かったぜ」
「…っ!?」
「頭は使い過ぎんなよ。少しは楽になったか?」
政宗が優しい口調で私に語りかけた時、思い出した。
そうだ。
私、あんなに悩んでいたのに…政宗で頭いっぱいになってた。
「…そのこと、すっかり忘れてた」
すると、また政宗が吹き出し「お前って本当におもしれぇ」と笑った。
その笑顔が眩しいくらい素敵で、私もつられて微笑んでいた。
すると、政宗が急に唇を奪ってから「葉月…」と私の名前を呼んだ。
「して良い?」
「えっ…もう?」
「そう、もう。お前、やっぱり可愛い」
二回目の抱っこは、私から首に手を回して抱きついていた。
政宗にくっつくと、すごく安心する。
「何?甘えてんの?」
「うん。政宗とするの…私も好き」
「…バーカ」
本当、馬鹿よね。
でも、良いの。
今、幸せだから…。
これからのことなんて、考えるのやめたわ。
だから…
こんな夜には、また側にいてね?