第55章 お返しなんて貰っても〜猿飛佐助〜
「信玄様には以前に聞かれたんだよ。バレンタインデーのやり方やホワイトデーのこと。だから俺から伝えたんだ。信玄様のお返しは豪華だったもんね。着物とか髪飾りとか。幸村は信玄様に習ってやったんじゃないかな。別に嫌々って訳じゃないと思うよ?」
「…そっか。良かった。なんか無理させてるみたいで申し訳なかったんだ」
「信玄様は律儀に返す人だし、イベント好きだからね。謙信様も…まあ意外だったけど、あの人も義理堅い人だし。すぐ次の日にお返ししてくれたもんね」
「うん、逆に悪かったかなって思って…」
…乙女心は複雑だな。
でも、幸村の時だけ引っかかるなんて…これは脈アリなんじゃないか?
俺はこっそりそう思った。
ん?でも何故だろう。
なんだかモヤモヤするこの気持ちは…。
「葉月さん、別に俺にまでくれなくて良かったのに。わざわざ義理チョコならぬ義理甘味なんて」
「えっ…佐助くんに義理なんてないよ。お世話になってるし、大好きだもん」
「…っ!?」
「佐助くん?」
「葉月さん、ちなみに聞いていい?…信玄様のことは…」
「もちろん好きだよ?」
「…謙信様は」
「ん?普通に好きだけど」
「幸村のことも…?」
「え?好きだよ」
「……俺の、ことは…」
「だーい好き!」
「〜〜…っ!!?うっ…葉月さん。俺、なんか胸が苦しい。動悸息切れが…」
「えっ!どうしたの?!佐助くんっ」
「最近、体調が思わしくないんだ。どうしてかな?君が越後に来た辺りからずっとなんだよ」
「えっ…何だろう。ストレス?…ごめんね、気づかなくて」
「いや、大丈夫だ」
「…何やってんだよ、お前ら」
「あ、幸村。大変なの。佐助くんが、顔が真っ赤だし、胸が痛いんだって」
「幸村、俺…最近おかしいんだよ」
「…だろうな。で、俺はどっからツッコめばいいんだ?」
俺と俺の背中を摩る葉月さんを交互に見ながら、幸村が呆れたように頭をかいてそう呟く。
すると、信玄様が笑いながら現れた。