第51章 約束〜明智光秀〜
夜に顕如の居る寺に着いた蘭丸は、葉月と共に顕如の前で深く頭を下げた。
「…蘭丸、これはどういうことだ?この娘、まさかあの時の…」
「申し訳ありません。しばらく、此方でこの人の身を隠させて頂けないでしょうか?」
「…何を言っている」
「蘭丸くん…良いよ。これ以上は悪いから」
「何言ってるのっ?!今一人で出て行ったらどんな危険な目に遭うかわからないんだよ?」
「蘭丸くん…」
蘭丸は真剣な目つきで葉月の腕を強めに握ってそう言った。
「少しで良いので…お願い致します。顕如様。どうか、どうかお願いします」
何度もそう首を垂れて繰り返す蘭丸に、顕如はため息をついて「わかった」と言った。
「しかし、一晩だけだ」
「顕如様…っ。ありがとうございます!」
「顕如さん…すみません。お世話になります」
「直ぐに出て行くことだ。人質にされたくなければな。
蘭丸も早く帰れ。城の奴らに気づかれるぞ」
「はい、では。また来るね、葉月様」
「ありがとう、蘭丸くん。気をつけてね」
蘭丸は直ぐさま、風のように消えて行った。
葉月が呆気にとられていると、顕如の声がして前を向く。
「さあ、此方に来い。悪いが、とても古くてお世辞にも快適とは言えないぞ」
「いえ、身を置かせて頂けるだけで有り難いです」
「全く…。こんな情けをかけてしまうとはな」
顕如は仕方なさそうにそう言っていたが、次の日も葉月は出て行く事はなく月日が経っていった。