第51章 約束〜明智光秀〜
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「おい、葉月。決心はついたか?」
「決心…ですか?」
「此方に残るか、故郷に帰るか決心がついたら伝えると言っていただろう?」
信長様に呼び出された私は、急にそんなことを言われキョトンとしてしまう。
ちょっと苛立ったように信長様は溜息をついた。
「…覚えておらんのか」
「え、あ。はい」
「まあ良い。残る決心がついたら俺の番いになれ」
「つ、つがい…?」
それって、結婚しろってこと?
「なんでですか?」
「貴様…っ。なんでですかとは何だ」
「あっ、すみません。だって、私を嫁にしても何も利益がありません。何処かの姫様と政略結婚した方が…」
「まあ、お前が居なければそれでも良かったが。今はお前がいる」
さすがの私も気づいた。
信長様は、私のことを…
最近の信長様にされた不審な言動が浮かび、想ってくれていたからだとわかる。
「あの…、でも」
「まあ、返事は急がん。だが、気は短い方なのでな。早めに頼む」
「このこと…他の方は知っていますか?」
「安土城の奴らには以前から言ってある。葉月に手を出した者はそれなりの対応をする…とな」
信長様の言葉に私は血の気が引いた。
…それは光秀さんだって、勿論知っていたはずだ。
それなのに、私のせいだ。
光秀さんがこんなリスクを背負って私と逢っているとは、知らなかった。
バクバクと心臓が早急に音を立てて、嫌な汗が出る。
光秀さんの立場を私が悪くしている。
私の存在が、光秀さんをまた悪者にしている…。
今頃、気づくなんて…。