第3章 貴方に触れたくて〜徳川家康〜
そうだなぁ…と秀吉さんは顔だけ上げて腕組みをすると
「なぁ、お前だって家康のこと友達としてじゃなく、それ以外の対象で見たことあるだろう?」
「うーん…」
「ないのか…」
「あ!ある」
「そう!それだ!」
「可愛くて小動物みたいだなぁって」
「…可愛い?」
「うん、可愛いでしょ?家康」
「可愛いは傷つくんじゃないかぁー?家康、男の子だし」
わざとらしいくらい大きな声で秀吉さんは言った。
「男の子…だよね。わかってる」
「いや、立派な青年。もう大人の男だ」
そう言うと、少し声のトーンを落として、諭すように私に言った。
「何となく、お前も気づいていたんじゃないか?」
「俺はお前がそんなに鈍感だとは思わないぞ」
私の頭を撫でながら、秀吉さんは私を覗き込んでそう言った。
「でも…家康は女の子に興味ないって思ってたから。急にそれ以上には見れないよ」
「まあなぁ。
…じゃあ、家康と恋仲になってみたいと思ったことは?」
「ないよ。だって家康にはもっとお淑やかで女の子らしくて可愛い子が似合うと思うから」
「俺には、お前も充分そう見えるんだけどな」
秀吉さんは、そう言って優しく微笑む。
「…ありがとう。でも、私はこのままがいい」
「このまま気楽な友達のままでいい」
膝を抱え、私はそう答える。
家康の怒りを思い出し、また落ち込む。
何も考えたくなかった。
「…うーん」
秀吉さんは一人で暫く唸り、
「よし、わかった!」
大きく膝を叩くと私に言った。
「葉月、お前、そいつと逢瀬に行って来い」
「え?家康は反対してたのに?」
「俺も隠れて見ててやるから」
「本当?」
「大丈夫!任せておけ!」
本当かなぁ…。
秀吉さん…私、なんだかすごく嫌な予感しかしません。