第51章 約束〜明智光秀〜
………
私の横で眠ってしまった光秀さんを起こさないよう、そっと離れる。
無防備な寝顔に暗い影が見えた。
…すごく疲れている。
それでも、約束を守ってくれた。
わざわざ逢いに来てくれた。
嬉しいのと、申し訳ない気持ちで光秀さんの頭を触る。
「…ごめんなさい、無理させて」
今だけでも、ゆっくり寝て下さい。
私が見守っていますから。
私よりも白く透き通った光秀さんの肌が、夜の光に艶めいている。
この光秀さんを知っている人が他にもいるのかもしれない。
そう思うと暗い気持ちになる。
想像よりずっと情熱的で、溶けてしまうように甘い…そんな光秀さんを私は知った。
『好き』とか『愛している』とか…
口にしたら、もっと気持ちが膨らみそうで怖くて言えなかった。
それなのに、大胆なことをしてしまったな。
付き合ってもいないのに、こうやって夜を越してしまうなんて。
でも、好きが止まらなくて。
自分から口づけて、求めてしまった。
光秀さんが生きているのを感じたくて。
深く、知りたくて。
だから、後悔はしていない。
…私は光秀さんを眺めながら、気づいたら眠っていた。
次に目を覚ました時には、光秀さんの姿は何処にもなかった。
ただ、陽の光だけが私の部屋に差し込んで、まるで昨夜のことは夢だったかのように朝を告げていた。