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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第51章 約束〜明智光秀〜




宴も終わり、広間から武将たちが帰る途中、政宗が言った。

「結局、光秀は来なかったな」
「どうせ、仕事かなんかだろ」
「いや…女じゃねーの?」


政宗と慶次が笑いながら話しているのが聞こえ、身体が凍りつく。
二人のゲラゲラと笑う声だけが耳に響いた。


「…下世話な会話」

そう呟いた家康が私を通り過ぎていこうとし、ふと立ち止まる。
それに気づいた三成くんも一緒に歩みを止めた。


「あれ?葉月、酔ったの?顔色が悪いね」
「…どうかなさいました?葉月様」
「大丈夫…。早めに休むよ」
「家康様、三成様、俺が部屋まで葉月様を連れて行くから心配しないで」


蘭丸くんが後ろから来て、私の顔を覗き込むといつもの可愛い顔が心配そうに歪む。


「本当だ。真っ青だね。俺につかまって」
「あ、ありがとう…」
「わあ、ちょっと。本当に大丈夫??」
 

軽い目眩を感じ、私は蘭丸くんの腕につかまると蘭丸くんに体重をかけてしまう。

優しくされると、余計に切なくなるのかな?
私の涙腺が緩み、涙の膜が張った。

蘭丸くんが「気持ち悪い?もうちょっとだからね」と背中を摩りながらゆっくり歩いてくれる。

…たぶん、これはお酒のせいじゃない。


光秀さんに女の人がいるかもしれない。
その人に逢いに行っているのかもしれない。
…恋人か、はたまた大人の関係のお相手?
そんな人があと何人いるのだろう。


それだけのことで私の目の前は真っ暗になった。
もう何も見えやしない。


逢えない間、何度も浮かんだあの言葉はやっぱり嘘だったのかな。
光秀さんなりのリップサービス?

…そんなの、いらない。


「ー…無事に帰れたら、一番に逢いに来る」


何度も脳内再生されたこの言葉は、まだ私の心を締めつけている。
あんな約束、光秀さんは忘れているかもしれないのに。

私だけがあの言葉に縋っている。



私は何を焦って怖がっているんだろう。
もう私の前に現れないんじゃないかって怯えているんだ。
こんなことで…。

人生が終わってしまう気すら、してしまう。


私のことは好きにならなくても良いから、他の人に気持ちを向けないで…。


光秀さん…。


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