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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第51章 約束〜明智光秀〜





「…これはなんだ」


光秀さんが細長い指で摘んだ紐付きの小袋が、私の目の前で左右に揺れる。
小さく膨らんだ白い小袋には、月の刺繍がはじっこに縫ってある。
一晩かかった、私のお手製だ。

「お…」
「お?」
「お守り、です…」

そう言うと、光秀さんがお守りを高く持ち上げながらしげしげとそれを見つめ呆れたように笑う。

「わざわざ全員分作ったのか?」
「いえ、光秀さんにだけ…作りました」

私の言葉に光秀さんの動きが止まり、ゆっくり視線だけ私に投げ掛けた。
私は見つめ返すことが出来ず、つい目を逸らしてしまう。

このお守りは、私なりの意思表示。
光秀さんにだけ作ることに意味がある。
『あなたは特別』という私からのメッセージだ。

わざわざ一人になる時間を狙って光秀さんの部屋に行き、お守りを渡すのには勇気がいった。
だって、今も足がガクガク震えている。
着物で足が隠れていて良かった。
私は高鳴る胸の音をかき消したくて、静かに呼吸をし口を開いた。


「受け取って貰えますか?」


これでは、もう告白しているようなものだ。
でも、はっきり伝えないと…。
最近、安土城のみんなは私と信長様をくっつけようとしているから。
そんな企みを感じていた私は、困っていた。

私も信長様もただの友人という関係だというのに。
信長様も私のことはそんな風には見ていないと思うし、やめて欲しい。
みんなが揶揄うのは構わない。
いつものことだもの。

でも、嫌だった。

…光秀さんだけには、誤解されたくない。



「…ああ。ありがとう」

光秀さんが私の目を見て感謝の言葉をかけてくれた時、もうそれだけで何も要らないと思うくらい胸がいっぱいになった。
いつもの意地悪ではない優しい笑みも、お礼と一緒に向けられた。
私はほっとしたのと嬉しさで目頭が熱くなる。


ああ、良かった。
受け取ってくれて。


「私も明日の戦場にご一緒したかったです」
「そう言うな。信長様はお前の身を案じていらっしゃるのだろう」
「わかってますけど…」


信長様は最近、妙に過保護だ。
始めは無理矢理にでも戦場に連れて行かれたというのに。
今では、城から出ることすらあまり良い顔をしない。


…一体、どうしたというのか。







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