第50章 抱きしめて欲しくて〜豊臣秀吉〜
私の身体を両手で掴み、「だって、口づけしたら許してくれるんだろ?」とちょっと笑って唇が当てられた。
そのままその唇が、頬や首筋に柔く当てられ「く、くすぐったい…」と私が肩を上げると秀吉さんは急に唇を離した。
「くすぐったいのか?」
「え…う、うん」
「そうか」
なんでそんな嬉しそうなの?
秀吉さんににっこりと微笑まれ、私は小首を傾げる。
「これから俺がいっぱい教えてやるからな」
「な、何を…?」
「さあ?」
二人きりの時に見せる悪戯っぽい顔の秀吉さんが目の前にいる。
ああ、好きだな。
この顔が。
私は秀吉さんの大きくて広い胸に、自ら飛び込むように抱きついた。
「大好き…っ!」
「うおっ、あっぶね…」
苦笑しながら、秀吉さんが抱き止めると私を見た。
「お前なあ」
「だって、嬉しいんだもん」
やっと言える喜びを噛み締めながら私は秀吉さんを見つめ、瞼を閉じた。
優しい口づけを待って…。