第50章 抱きしめて欲しくて〜豊臣秀吉〜
秀吉さんが私に近づいて来るのを感じ、「ダメだよ。これ以上私に近づいたら」と言いながら身を引いた。
「どうしてそんなこと…」
「これ以上近づいたら、私もう秀吉さんのこと、離さないから。だから、もう優しくしないで…。こっち来ないで」
「…葉月」
「お願い、秀吉さん…」
それでも、ゆっくりと近づいてくる秀吉さんに「ダメって言ってるのに…」と言った時にはもう抱きしめられていた。
「なんで?離れられなくなるんだろ…俺から。俺もお前と離れたくない」
「なん、で…?」
「俺もお前が好きだから。じゃなかったら、わざわざこんなことしねぇよ。何でも優しいからって片付けるなよ」
「秀吉さん…」
「好きだから、お前の気持ちをちゃんと知るまで手は出したくなかったんだ。まあ、つい…ちょっと口づけしたりしたけど。
いや、それはすまん。
でも、お前が大事だったんだよ。
信じてくれよ」
私は大きな秀吉さんの背中に手を伸ばした。
ああ、今日も温かい。
あのお日様のように。
お日様以上に。
私は思いっきり息を吸い、秀吉さんの匂いを吸い込んだ。
ほっとする。
この匂いも、この大きさも、この重みも何もかも。
「うん。信じる…。私もずっと秀吉さんの気持ちが知りたかったの」
「葉月、悪かった。中途半端で、俺…」
「いいよ。口づけしてくれたら許してあげるから」
「…っ、お前なあ」
「ふふ、冗談。もう許してあげ…」
私が笑っていると、秀吉さんが抱きしめていた手を緩めて私から離れた。
真剣な顔で瞳を覗き込まれ、こくんと息を呑んだ。
「えっと、秀吉…さん?」
「煽ったのはお前だ。責任取れよ?」