第48章 意地悪の向こう側〜明智光秀〜
「あっ…光秀さん、ちょっと待っ…」
「お前が先に仕掛けたんだ。ほら、黙らないと舌を噛むぞ」
「痛いことはしない約束です…っ」
「約束は破るためにあるようなものだ。残念だったな」
「〜…っ。またそうやって意地悪言うんだから…」
「お前に意地悪するのは俺の特権、だろ?」
見透かされている。
そう…、私は光秀さんのその歪んだ笑顔も好きだって。
何をされても構わないって思っているって…。
いつだってお見通しなんだ。
優しい手つきなのに、逃すのを許してくれない口づけに、力が抜けていく。
「もう…」
「やっと降参する気になったか?」
いつものように光秀さんが甘く囁きながら、ことを進める。
光秀さんの愛し方は、蛇が身体に絡まってくるようだ。
じわじわと首を絞めるかのように私を堕としながら、ずるずると闇に引き摺り込んでいく。
光秀さんがいないと駄目な身体に変えようと企む様は、愉しんでいるように見える。
実際、面白がっているんだ…この人は。
私は光秀さんの柔らかい髪の毛が身体に触れるたびに、愛しさが募るというのに。
「ぁ…っ」
自分の声じゃないみたいな艶めいた声が、勝手に口から出てくる。
ああ、自分が変わっていくのが怖い。
そう思っているのに、もっと触れて欲しくなる。
光秀さんは、私から求めることを導かせるような…意地の悪い指先使いに抗議したくなる。
きっとこの人は、私を揶揄うのが本当に好きなのだ。
それなのに、そんな所も好きで堪らなく幸せだった。
温かい涙しか出ないもの。
「…可愛いな、お前は」
そう囁くように言われたら、頭が痺れてしまう。
宙に舞う私の手をからめ取り、口づけてくれる。
「光秀、さん…」
もう、溶けてなくなりそう
ー…意地悪の向こう側を知ってしまったから