第49章 気づいてよ〜蘭丸〜
蘭丸くんがいつものように女の人に囲まれている。
まるで人気アイドルのように一人一人に笑顔を振り撒いているのを見て、私は思わず見入ってしまった。
…凄いな。
ちゃんとどの子にも平等に接して。
優しくなかったら絶対に出来ない。
この子はきっと、すごく良い子なんだろう。
いつだって人の気持ちに寄り添える子だって、一緒にいるとわかる。
この人気ぶりは、ただ顔が可愛いだけじゃない。
そんな内面にも皆気づいて、そこにも惹かれてるんだ。
「あ、葉月様っ」
蘭丸くんが私に気づき、「ちょっとごめんね」とにこやかに皆に伝え私の所に駆けてくる。
「どうしたの?そんなにぼーっとして」
「蘭丸くん、相変わらず凄く人気だなぁって見てたんだよ」
「ふーん、そう?」
なんでもないように答える蘭丸くんに思わず笑ってしまう。
こんなことは日常茶飯事なのね、蘭丸くんにとっては。
でも、きっといるのだろう。
女の子に一生涯モテる星の下に生まれたような人が。
蘭丸くんを見ていたら思い出した。
「私の知り合いにも、そんな人がいたなぁ…と思ってね」
「へえ。どんな人?」
「ちょうどね、私の故郷ではこの時期はバレンタインっていう行事があって。
女の子が意中の男の子に気持ちの込もった甘味を作って渡すの。
もうほぼ告白みたいなものだよね。
それを『ありがとう』ってどの子からも笑顔で受け取ってた…優しい男の子がいたなぁって」
私が顎に人差し指を当てながら思い出していると、蘭丸くんがちょっと身を乗り出した。
「その人、かっこ良かったの?」
「もちろん!蘭丸くんと一緒で中身も素敵だった。でも、蘭丸くんの方がずーっと顔は整っているし可愛いけどね」
私が悪戯っぽく惚けて言うと、蘭丸くんがクスッと笑ってちょっと肩を上げた。