第48章 意地悪の向こう側〜明智光秀〜
自分の吐息で目を覚ます。
光秀さんの腕の中で起きるのは、何度目なのか。
まだ現実味がない。
朝から色気が止めどなく流れているこの人の横にいるとか、私は前世でどんな徳を積んでいたのだろう。
「あの…光秀さん」
「ん…?」
気怠く答える光秀さんの掠れた声が耳元で聞こえ、こそばゆくなる。
光秀さんの腕と足が私に絡まっているから動けない。
嬉しいけれど、どうしたら良いかわからなくて私は困った。
布団の中でもぞもぞと動いていると、光秀さんが笑う。
「…なんだ。こんな朝からとは、お前も随分と積極的になったな」
「や……やめて下さい。そういう冗談は」
私が頬を染めて嫌がると、光秀さんが肘をついて此方を見た。
そうやって黙って見つめてくるのは反則だと思う。
寝起きでも綺麗な顔でこっち見ないで欲しい。
サラサラと輝く光秀さんの髪の毛が横に揺れ、私は目を泳がせた。
「…なんですか?」
「お前は、どこまでも慣れないな」
「そんなことないですよ。だいぶ慣れて…」
「ないだろう?」
「…そうですね、はい」
「くくく」
「なっ、なんで笑うんですかっ!」
またすぐそうやって揶揄うんだから。
そもそも、私が光秀さんに慣れるわけないじゃない。
ずっと好きだったんだから。
こうやって布団に一緒にいるとか、まだ夢みたいなんだもん。
私が頬を膨らませると、光秀さんの目が優しく細くなり私はドキッとしてしまう。
この柔らかい表情が、私を映す瞳が…まるで私を愛しいと言ってくれているようで胸が勝手に熱くなるのだ。
「ずるいです。そんな優しい顔するの」
「お前の好きな顔だろう?よく見ておけ」
「〜っ!もう、やだ…」
私が布団をかぶって恥ずかしがると、ゆっくり布団が捲られ光秀さんが私の顔を出す。
「隠すな。愛しい女の顔が見えないだろう?」
「…揶揄うの、やめて下さい…」
「ほう?揶揄っていないとわからせてやろうか?」
光秀さんが布団を剥いで、私の手を掴み指を柔く噛んだ。
悪戯っぽい笑みを浮かべる光秀さんに、心が奪われる。