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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第45章 続・どこか遠くに行く貴方へ〜明智光秀〜


………

「光秀さんの優しさってわかりにくいですよね」

私が光秀さんの背中に向かって言うと、光秀さんは此方を振り向いて軽く笑った。

「お前に優しくした覚えはないが?」
「夏の怪談話の時ですよ。…覚えてないかもしれませんけど。あの時、怖がっていた私の気を逸らす為にちょっかいを出してくれたのでしょう?」

光秀さんは「ああ、あの時か」と呟くと、ふっと笑って「そういう事にしといてやろう」と誤魔化そうする。

「違うんですか?」
「…男というのは、もっと単純明快だ。そんな回りくどいことはしない」
「光秀さんは全然単純じゃないと思いますけど…」
「まあ、いつもはな」
「……?」

光秀さんが何を言おうとしているのかわからず、見つめ返すとあの時のように光秀さんの指先が私の手に触れる。
そして、私の手を掴むとそこに唇を当てた。


「お前が怖がって他の男に触れるのを阻止する為だ。こうやって触れるのも触れられるのも、俺だけが良い…そう思っていたからな」


私は信じられない想いで見つめてしまう。
頬が熱い。
未だに、私は光秀さんの指先に、光秀さん自身に惑わされてしまう。  


「…これくらいで照れられるとは。先が思いやられるな」

光秀さんはそう言って困ったように笑い、私の手をそのまま絡ませる。

やっぱり、まだ恥ずかしい。
手を繋ぐだけで、私はのぼせてしまうのだ。
そんな私の相手をしている光秀さんは、確かに大変かもしれないな。

「すみません…不慣れで」
「それは気にするな。むしろ好都合だ」

光秀さんが微笑み、私の頬を指先で優しく撫でた。

「お前は俺にしか触れられていない。慣れていないとはそういうことだろう?…これ以上、俺を喜ばすな」

私が照れて俯くと、長い指先で顎を掬われる。

間近に迫った光秀さんの顔に戸惑っていると
「口づけにもまだ慣れないのか?」
と光秀さんが言い、柔らかく唇が当てられた。

光秀さんの御殿に泊まって二日目。
私はまだ現実を受け入れられていない。

あの時は見つめるだけだった背中が、今はすぐ近くにあるなんて。
信じられないのだ。

「買い物にでも行くか。手を繋いで」

そう言って私を甘やかしてくれる光秀さん。
どうか待っていて。
もう少し…。


ー…早く大人になれるように頑張りますから。



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