第44章 つい出てしまった本音〜真田幸村〜
ぽかぽか陽気のある日。
小高い丘で幸村と葉月は並んで座り、佐助が来るのを待っていた。
すると、幸村がぼんやりと空を眺めながら口を開いた。
「ー…お前ってさぁ、どっちが好きなんだよ。謙信様か?それとも信玄様?」
「な、何言ってんの…幸村」
「いや、だってさ。いっつも見惚れて喋んねーだろ、あの二人が来ると。俺とはアホみたいによく喋んのによ」
「…アホみたいは余計だよ。まあ、話さないのではなくあまりの迫力に話せない、のが正解だね。二人とも美し過ぎて、こんな平々凡々な私は恐れ多くて近寄れないって言うか…なんというか」
「へー…」
「何、へーって。そもそも幸村、興味ないでしょ?こんな話」
「いや、お前って結構自分のこと卑下してんだな」
「え?」
「だって、お前ふつーに可愛いじゃん」
急に黙り込み、俯いた葉月を見て、やっと自分の発言に気づいた幸村は一気に頬を染め、慌てふためいた。
「……あっ!いや、何言ってんだろ、俺。馬鹿馬鹿、お前まで赤くなんなよっ!ただの一般論だよ。俺の意見じゃねーって!おいっ!聞いてんのかよっ!」
…幸村って、無自覚に凄いこと言うな。
しかも、葉月さんが誰を好きか気になったからつい質問したということにも気づいてなさそうだ。
「俺、邪魔かな…」
ずっと木陰で二人のやりとりを見ていた佐助は、出て行く機会を完全に無くし、そう呟くしかなかった。