第43章 君の唇が欲しくて〜今川義元〜
幸村が髪の毛をくしゃくしゃしながら苛立ち、義元さんは納得いかないような顔をして口を尖らせる。
私は二人のやりとりを見て、思わず笑ってしまった。
すると、幸村の鋭い視線が飛ぶ。
「お前も!隙だらけだ。気をつけろよ」
「あ、はい。ごめん、幸村」
「…なんで葉月に怒るの?ヤキモチ?」
「はぁ?!な、なんで俺がやきもちなんか…っ」
「へえ、秘めた恋か。美しいね」
「はあ…勘弁してくれよ…」
幸村が片手で顔を覆い、項垂れた。
こんな幸村は珍しい。
他人事ながら、大変そうだな…と幸村に同情してしまった。
今川義元…あまりの彼のマイペースさに笑みが溢れた。
そんな私に気づき、義元さんが私にそっと近づき囁いた。
「残念だな、葉月。また二人の時に、ね」
「え…」
私が顔を赤くして義元さんを見ると、ふんわりと微笑んでくれた。
その時、義元さんから甘い香りが漂った気がした。
「こら、お前らいい加減にしろっ!」
城下に幸村の声が響いた…。