第42章 どこか遠くに行く貴方へ〜明智光秀〜
違う意味で頭痛がしてきた。
どうしよう…。
ど、どうしよう。本当に。
みんなと合わせる顔がない。
光秀さんなんて、もう本当に…。
あ、でも光秀さんは今日からまた遠方に行くのよね。
謝りたかったけれど、それこそ気まずいし…良かったかな。
帰ってきた時にはもう忘れているはず。
うんうん。
私もあれは覚えていないってことにしてやり過ごそう。
みんなにも、お酒の席での出来事として忘れてもらおう。
泣いたことも、仲間を思っての涙だと思って貰えれば良い。
「みんなに謝らなきゃ、そんな醜態を晒していたのなら」
「そう…?会わない方が良いと思うけど」
「え、どうして?私、他にも何か…した?」
「いや、あんたはしてないよ」
「じゃあ…なんで…」
スッと急に襖が開き、光秀さんが顔を出した。
一番顔を合わせられない人の登場に私は固まる。
家康に目で助けを求めても、逸らされてしまった。
…い、家康〜っ。
「あ、光秀さん。おはようございます。昨日はすみませんでした。私、何も覚えていなくて…。ご迷惑をおかけして…」
私は出来るだけいつも通りの笑顔を浮かべて、光秀さんを見ながらお礼を口にした。
「何を言っている。俺が介抱するのは当然だろう」
当然…?
光秀さんの言葉に引っかかりつつも、もっと気になる言葉が。
「あの…私、光秀さんに介抱されたんですか?」
「倒れたお前を部屋まで運んだのは、俺だ」
「…そうだよ。言わなかったっけ?」
家康がしれっと答え、私は家康をちょっと睨んだ。
「…聞いてないもん」
私の視線を感じているはずなのに、家康は一切こっちを見ようとしない。
光秀さんが来た途端、その態度はなに?
私が首を傾げていると、光秀さんが急に私を横抱きにした。
「では、家康。後は俺が面倒を見る。悪かったな」
「…別に良いですよ。お大事に」
「ちょっと、光秀さん?!」
「それと朝餉は二人分不要だ。葉月は俺の御殿に連れて行く」
「はいはい、どうぞ。ご自由に。…皆には俺から伝えておきますよ」