第42章 どこか遠くに行く貴方へ〜明智光秀〜
頭が…痛い。
朝、小鳥の囀りより先に気持ち悪さで目が覚めた私は、布団の中で寝返りをうつ。
…ああ、もう二度とお酒は飲まない。
今さら後悔しても、もう遅い。
だけれど、後悔せずにはいられないくらいに頭が痛いのだ。
リズミカルにズッキンズッキンと痛む頭を抱えながら、私は布団から出て家康の所へ藁をもすがる思いで向かった。
「家康…入っていい?」
「葉月?!起きて大丈夫なの?」
「…大丈夫じゃない、です」
「これに懲りたら、もうあんなに馬鹿みたく飲まないことだね」
「はい…」
「あと、二日酔いに効く薬なんてないから」
「えぇ?!」
「何か食べれば気持ち悪いのも頭痛も時期に治るよ」
「…何も食べたくない」
「駄目だよ、無理しても食べなきゃ。あと、水分沢山摂って」
…家康、まるでお母さんみたい。
私は渋々頷く。
家康は小さく息を吐くと、「光秀さんと離れるのが嫌だからってあんなに飲むなんてね…」と呟く。
私は光秀さんというワードで急に目が覚めた。
「えっ?!なんで家康、そんなこと知ってるの?慶次?慶次が喋った?」
「何言ってんの。もうみんな知ってるよ…あんたが自分で言ってたじゃない」
嘘だ。
覚えてない。
お酒飲んで記憶なくしたことも、倒れたことも私は初めてだった。
恐い…こんなことが本当にあるのね。
「私、倒れただけじゃなかったの?」
「あぁ…あんた、覚えてないんだ。知りたいなら教えるけど」
「知りたくない…けど、教えて」
「泣いてたよ。『行かないで、光秀さん』って。あまりにも悲愴的だったから、信長様も…」
「信長様も聞いてたの?」
「だから、みんなで聞いてたんだって。あんたが泣き出したもんだから、静まり返って宴会は終わり」
「……っ!?」
ちょっとだけ、思い出した。
私は光秀さんの手を振り払って、やだっ言って。
でも急に悲しくなって、泣いて…で、倒れたんだ。
…めっちゃ迷惑じゃない、私。
何をやってるんだろう。