第41章 恋の病にかかったら〜石田三成〜
つい、私はまた笑って誤魔化そうとしてしまう。
三成くんが怒っている気がしてしまい、取り繕いたかったのだ。
きっと私の身体を心配しているのだろう。
黙ったままだから、それが余計に怖い。
いつも優しい分、静かに怒っている様は信長様より迫力があると思う…私は。
「…とりあえず、中に入って下さい。中の方が暖かいですから」
「はい。ありがとうございます。お邪魔します」
三成くんが私の手を取って、起き上がらせるとすぐ中に入れてくれた。
私は部屋に入ると、三成くんの背中に語りかけた。
「…怒ってる?」
「そうですね。少し」
「…勝手に来たから?」
三成くんは私の方を見て少し息を吐くと、眉を下げた。
「本当にそんな理由で私が怒ると?」
「ううん、そんなことは…あっ」
三成くんが急に私の手を引き、抱き寄せる。
私は驚いてしまい、三成くんの腕の中で固まった。
いつだって確認してことを運ぶ三成くんから、初めて強引に抱擁され胸が勝手に高鳴る。
「身体が冷たいです」
「…ごめんなさい」
「貴女を読書の邪魔と思ったことは一度もありません。こんな風に冷え切るまで廊下にいては駄目です。こんな夜中に、こんな場所で」
「はい…」
「私に何か用でしたか?もちろん用がなくても来て頂けたら嬉しいのですが」
「本当に?」
「勿論です。どうなされました?」
「えっと…ただ逢いたかっただけなの。三成くんに」
「そうでしたか。ありがとうございます」
そう言って、抱きしめていた腕を緩めると三成くんはいつものように、にっこりと笑う。
やっぱり三成くんの笑顔は安心するな。
私はほっとして微笑み返すと、三成くんの笑みが深くなった。
「葉月様の笑顔を見ていると元気になれますね」
「そんなこと…」
「ありますよ。少なくとも私は」
そんな風に男性に言われたことはない。
私は嬉しさと恥ずかしさでちょと俯いた。
「さて、葉月様」
「…?はい」
「こんな夜に、私の部屋に葉月様から訪ねて下さり、こうやって抱きしめ合っていると…さすがの私もこのまま返す気にはならないのですが、大丈夫ですか?」