第40章 続・待ち合わせは、時間通りに〜武田信玄〜
「…気が変わった」
そう言うと、俺は葉月の腰を引き寄せて近づく。
いつもより更に大人しくなっている葉月を路地裏に連れて行き、両手で行く手を塞いだ。
目を泳がせて、戸惑いを隠せない葉月の姿は今すぐ襲いたくなるくらいに可愛らしかった。
さて…どうしてやろうか。
「信玄様…どうしたんですか?らしくないですよ」
「そうか、らしくないか。いつでも優しいのが俺らしいかい?」
「…?そう、ですね」
「余裕があって、君にも決して手を出さない。美味しい食事を食べたら、律儀に送って行くのがいつもの俺…そうだね?」
「はい、そうです」
「では、こんな風にはしないかな?君の中の俺は」
葉月の髪の毛を耳にかけ、ゆっくり耳から顎にかけて指でなぞり…俺は葉月を誘った。
ビクッと身体を揺らし、瞳を潤ます葉月のなんと可愛いことか。
少し虐めたくなるのは、俺の性なのだろう。
葉月の唇に顔をぎりぎりまで近づけ、様子を伺う。
その期待と不安の混じった葉月の顔が堪らなく征服欲を刺激する。
壁と俺に挟まれて動けない葉月は、どうするのか。
俺は笑って問う。
「さあ、葉月。君はどうしたい?君が決めていいよ」
「…や、やめて下さい。戯れが過ぎます」
「そうか、君はこれを戯れと思うか。…残念だな」
俺が笑って離れようとすると、葉月の緊張が緩んだ。
そこに間髪入れず、俺は口づけをした。
始めは驚いていた葉月だったが、少しずつ受け入れ、最後には応えてくれた。
安心して気の緩んだ時こそ攻め時だ。
戦術と変わらないさ…そうだろう?
…それにしても、葉月はなんて愛らしいのか。
理性が飛びそうだ。
唇を少し離し、「君は良くない口づけの仕方をするな」と文句を言って葉月の動揺する姿を愉しんだ。
さあて、もっと君を味わおうじゃないか。
お楽しみはこれからだよ、姫…。