第2章 続・朝が来るまで待って〜明智光秀〜
手先から足先から冷たくなっていくのを感じる。
光秀さんの横に人がいる。
遠目からでも綺麗な女性だとわかる。
光秀さんにしなだれて…
あんな…
あんな…
家康が私の視線の先を見つめ、私を静かに見る。
「家康…」
「…何?」
「お茶屋、行きたいな。三人で。三成くん、どう?」
「勿論、ご一緒致します」
「…わかった、行こう」
ため息をついて家康が私の背中を優しく押した。
三人で入ったお茶屋は、とても賑わっていた。
明るい気分になりたかったのに…
頼んだ茶菓子は全く味がしなかった。
こんなに嫉妬深かっただろうか。
恋仲になる前から、光秀さんから女性の匂いは感じていたじゃないか。
あれだけの人だから、女性に放っておかれるわけないじゃない。
そう言い聞かせても気持ちは沈んだままだ。
私の知らない光秀さんを見た。
それがこんなに苦しいなんて。
光秀さんには光秀さんの世界があって、過去がある。
頭ではわかっているつもりだったのに。
仕事なのかもしれない。
情報を聞き出していただけかもしれない。
でも…違ったら?
そうじゃなかったら?
あの人が彼女だったら…?
前でもなく、現在進行形の人だったら?
光秀さんには忘れられない人とかいないのだろうか。
どれだけの恋愛経験をしてきたのだろう。
聞いてみたい。
でも、怖くて聞けない。
幼稚なくせに嫉妬深いと呆れられたら…幻滅されたら…
嫌われたら…
生きていけない。
私、光秀さんのこと何も知らないんだ。
今、どんな仕事をしているかも。
今までどんな女性を愛していたのかも。
愛されていたのかも
何にも知らなかった。