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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第38章 君と雨の日に〜徳川家康〜



「…やっぱりな」

所用を済ませて自室に戻ると、予想通りの展開が広がっていた。

「家康、何がやっぱりなんだ?」
「此処、俺の部屋なんですけど」
「おう、邪魔してるぜ。饅頭、お前も食うか?」
「素敵ですね!お茶、わたくしが淹れましょうか」
「あっ三成。いや、お前は座っていろ。俺が淹れるから…な」

俺の部屋に光秀さん以外が集まり、葉月を囲んでいた。
葉月は小さな身体をもっと小さくして、俺を見ていた。
『どうしたら良いの?』
まるで、そう顔に書いてあるようだった。

此処の人たちは、皆、女という女に慣れている。
しかも、非常に異常に女に不自由していない。
女の方からごまんと寄ってくるのだ。
だから、こんなにも葉月に警戒されると征服欲が湧くのだろう。
しかも俺にだけ異様に懐いている姿を見せつけられたら、余計に…だ。

あーあ、もう。
短かったな、俺と葉月だけの時間は。
しかも腹立たしいのは、三成がちゃっかり葉月の隣に座っていること。

こいつ…本当に抜け目なくてムカつく。


「三成、そこどいて」

「お、おい。家康…」
「へえ。やるじゃねぇか」
「葉月、お待たせ」

俺は無理矢理葉月と三成の隣に座る。
政宗さんの目が愉しげにぎらぎら光り、秀吉さんは慌てる。

「あら、葉月様の隣ではなくなり残念です。でも、家康様のお隣とは光栄ですね」

ちっとも残念そうに見えない顔で言う、三成。
余裕ある笑顔まで浮かべて…。
こいつの腹ん中は全く読めない。

俺が三成を睨むと、葉月がクスクスと笑う。

「家康と三成くんって仲良しなんだね」
「はあ?」

なんでそうなるんだよ。
この子…って。
俺が呆れて溜息をついた。

でも、みんなはそれどころじゃなかったみたいだ。
初めて見たであろう葉月の花のような笑顔に息を呑んだのを感じた。

全く。
こんなに大勢の男を虜にするとか。
お伽話じゃないんだから。

「…え?私、変なこと言ったかな?」

みんなの視線を感じて、葉月が俺に聞く。

だから、そこじゃないから。
俺はこの困った女の子に呆れて何も言えなかった。


ー…君の笑顔に見惚れているんだよ。でも、そんなこと死んでも教えてやんないけどね。

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