第37章 たとえば、私がお見合いなんかしても〜豊臣秀吉〜
朝から秀吉さんに呼び出された私は、沢山の縁談話を勧められた。
なんという有り難いお話。
身に余る光栄ですよ。
でも、私に興味がないのでしょう…その方々。
政略結婚とか、勘弁して下さい。
「もう、嫌です」
「嫌ですってお前…。せっかくのお話だぞ?信長様の顔を立てるつもりでだな…」
「私、二度とお見合いしたくないです」
前回も縁談の話があり、断るのは心が痛んだ。
例えそれが初めてお会いした、私にはまるで興味のない殿方だとしても。
「私、もうこんな思いをするならずっと一人で良いです」
「そんなにか?」
「そんなに、です」
モテる人にはわからない感覚だろうな…。
私には、バレンタインデーにチョコを受け取って貰えなかったことがある。
『他に好きな人がいるから』と。
チョコレートくらい、別に受け取れば良いのにそれも拒否。
断られたのだから仕方ないが、その行動に驚いた記憶がある。
付き合って欲しいなんて言ってないのに、そこまでする?
チョコレートに罪はないのに。
私はあの時、自分を否定されたような気がした。
お前の想いなんていらない、って。
…まあ、そんな理由で断られる側の気持ちがわかるのだ。
私には。
でも、秀吉さんにそんなことわかるわけもないよね。
この城で一二を争うモテ男と名高い方なのだから。
…私は捻くれているのかな。
「秀吉さんには経験ないでしょうけれど、断られるのって悲しいんですよ?」
「…お前、断られた奴の気持ちを心配しているのか。そうだったのか。優しいんだな、お前は」
「まあ、経験者なので」
「経験者?…葉月、振られたことがあるのか?」
「ありますよ、もちろん」
「…え?!」
…何、その信じられないみたいな顔。
まあ、そうだろうなという顔されるより良いか。
一体どういう風に見えているのだろう…私は。
秀吉さんの目から。
あまりにも驚かれて、私は複雑な気持ちだった。