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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第35章 好きだから・後編〜明智光秀〜



寒空の下、私は人混みの中である人を見つけた。

「久兵衛さんっ!」

会えたのはあの時以来だから、嬉しくて思わず大きな声で呼び止めてしまった。

私が駆け寄ると柔らかく微笑み返してくれる。
私は、以前から久兵衛さんが好きだ。
もちろん人として。
きっとこの人なら光秀さんを裏切らない。
どんな時でもあの人の側に居て守って助けてくれるだろう。
そんな絶対の信頼があるのだ、久兵衛さんには。

「こんにちは、葉月様。もう城下に出られて宜しいのですか?」

妙に落ち着いたこの雰囲気も、光秀さんを連想させてドキドキしてしまう。
少し陰がある所もあの人に似ているな…。

「はい。今日は家康が同行してくれたので出て来れました」
「そうですか」

そう言って、ちらっと遠くで待つ家康を確認した。
家康は私たちの視線を感じたのか、すっと横を向く。
私は苦笑いをし、久兵衛さんに向き直る。

「この間は助けて頂き、ありがとうございました。私、ちゃんとお礼が言えてなかったですよね。挨拶が遅くなって申し訳ありません」
「いえ…私は何もしておりませんよ」
「え、でも」
「指示に従ったまでのこと。お気になさらず。…葉月様がご無事で何よりでした」
「…ありがとうございます」
「彼の方の必死な姿はあまりお目にかかれたことはないので…驚きましたよ」
「久兵衛さんも?」
「はい」
「私もです。光秀さんが走って来たと知った時、びっくりしました」
「それほど、大切に思っているのでしょうね…。葉月様のことを」
「え…それって」
「…おっと、私語が過ぎましたね。では、私はこれで失礼致します」

私の中で鐘の音が聞こえた気がした。
どちらかというと、お寺ではなくチャペルの方。
私は、それくらい舞い上がってしまった。
久兵衛さんの一言で。

私は、久兵衛さんが去った後も嬉しくて動けずにいた。

「葉月?ほら、呉服屋行くんじゃなかったの?」

しびれを切らし家康が私の側に来る。
家康、私は今、それどころじゃないんだよ。

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