• テキストサイズ

イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第34章 風邪を引いた朝は…〜上杉謙信〜



…風邪を引くと、思い出してしまう。

家康がお薬を処方してくれたこと。
咳をすると、秀吉さんが背中を摩りに来てくれたこと。
政宗の作る、優しい味のお粥。
信長様がこっそり分けてくれた、金平糖。
光秀さんがひんやりとした手でおでこを冷やしてくれたこと。
三成くんが家康に邪魔と言われながらも一所懸命に看病してくれたことを。

安土城のみんなは元気でいるだろうか?
もう、私のことなんて忘れているのかもしれないな。
私は裏切り者みたいなものだし…。
わかってはいるけれど。

ー…みんなに会いたいな。

ぐすっと私が鼻を啜る。

「葉月さん、大丈夫…じゃなさそうだね」

部屋を訪れた佐助くんが気まずそうに後ずさる。
私は大きく首を振って『違う違う』とアピールした。

いかんいかん。
身体が弱っている時は、傷心気味になってしまう。
私が此処に身を置かして貰えているというだけで、有り難いというのに。

…でも、離れて会えなくなると余計にその有り難みや、存在の大きさに気づくよね。
安土城のみんなは、私にとって家族みたいなものだったからな。

「…また、何か考え事してたの?」

佐助くんは私のことをよくわかってくれる。
まるで、幼馴染のように。
私は笑って誤魔化すと、佐助くんが言った。

「安土城の人達はきっと元気だよ」

私が驚いた顔をすると、佐助くんが薄く笑う。
「違った?」

私が首を振ると、佐助くんが側に寄り私の隣に座った。

「風邪が治ったら、また話そう。俺、君の話を聞くのが好きなんだ。俺になら、気兼ねなく話せるだろう?」

『ありがとう』私が口元を動かすと、佐助くんは「どういたしまして」と言った。
ただ、横にいてくれるだけなのに。
佐助くんと一緒にいると、安心する。
私にはもったいないくらいの、現代仲間だな。

私が笑いかけると、佐助くんの眼鏡の奥の目が優しく細くなった。

「あ、これ渡しに来たんだ。林檎、後で食べなよ。これは幸村からの分」

私は沢山の林檎を受け取り、幸せだった。


…こんなに心配されているのに、私の風邪は全く良くならないまま二日が過ぎてしまった。

/ 462ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp