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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第33章 好きだから・中編〜明智光秀〜



すると、光秀さんは私の頭を優しく撫でる。

「お前は本当に良い子だな」

ただの褒め言葉なのに。
あくまでも私は小娘で、子ども扱いなのだ。
それが、こんなに悔しいなんて私は知らなかった。
また涙が出そうになる。

潤んだ瞳でつい、光秀さんを見つめてしまう。
彼のその薄い瞳の中に、ほんの僅かだけ戸惑いの色が滲んで見えたような気がした。

「さあ、もう眠れ」
「…あの。ちょっとだけ、わがままを言っても良いですか?」
「あぁ」
「私、後ろを向きますから…寝たなと思ったらすぐに帰って下さいね」
「それのどこがわがままなんだ」
「寝かしつけて貰っているのに、注文付けてますから。…以上です。では、おやすみなさい」

私は光秀さんに挨拶をすると、光秀さんに話す隙を失くさせるように身体ごと後ろを向いた。
これなら寝たふりしていても気づかれない。
私が寝た後、去られるのは寂しい。
そのまま、泣いたとしてもバレないだろう。

早く居なくなって欲しい気持ちと
ずっと此処に居て欲しい気持ちがせめぎ合う。
矛盾している、私は。
本当は、寝たら帰ってしまうなんて嫌なんだもん。
だから、寝かしつけなんて止めて欲しいのに。
余計に寂しくなる。
気持ちはないのに、貴方の温もりだけ残していかれたら…私はもう…。

「……っ」

思わず声にならない声が涙と一緒に出る。
私は口に手を当てて、声を殺す。

本当は、昨夜も貴方が居なくなった後に目が覚めたんです。
貴方の匂いが少し残っていた部屋にいるのが辛かった。
またそんな想いをするのは嫌なんです。

…でも、言えない。
こんなに好きな気持ちばかり、押し付けたくない。
次々と溢れては止まらない涙は、貴方への気持ちのようだ。
溺れてしまいそうになる。

はらはらと涙が静かに横に流れ、布が濡れて染みになっていく。

駄目だ。
こんな風に肩を震わせたら…
泣いているのを気づかれてしまう。

頭でわかっていても、止まらない涙をどうすればいいかわからない。



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